VR酔いは克服できる?酔う原因と酔いにくくなるコツについて
VRはゲームやコミュニケーション以外にも教育や訓練、観光、産業、ショッピングなどビジネス分野でも活用されている技術です。人との接触や国内外への移動が難しい状況下では、不便さを解消するために有効な技術として注目が集まっています。そんなVRの普及を妨げる要因と考えられているVR酔いについて発生原因や克服方法をご紹介します。
VR酔いしやすくなる原因や環境
VRとはVirtualRealityの略で、仮想現実、人工現実感などの意味を持っています。
コンピュータが作り出した空間や世界を、ヘッドセット(VRゴーグル)と呼ばれるデバイスを通して視覚と聴覚に流すことで、脳がまるで現実の世界のように認識する仕組みです。
近年の技術の進歩により、今後もさまざまな業界で活用されていくことが予想されています。とても便利な技術ではあるものの、中にはVRを体験しているうちに、頭痛がしたり、胃がむかついてきたり、吐き気を催したりする人もいるようです。
症状としては乗り物酔いや3D酔いに近く「VR酔い」の通称を持っています。VR酔いのしやすさには個人差があり、いくら遊んでいてもまったく症状が出ない人もいれば、短時間のプレイであっても気分が悪くなる人もいます。
VR酔いの原因には諸説あります。その中でももっとも有名なものは「感覚不一致」説で、自分がいま実際に近くしている感覚と過去の経験から予測される感覚との矛盾が原因で発生するというものです。
たとえば、自動車や電車、船などの乗り物を利用する場合、過去体験から自身の筋肉や関節に加わる重力や振動などの感覚を無意識に予測しますが、VRでは視覚と聴覚の変化しか与えられないため、脳が矛盾を感じるということです。
VR酔いは、乗り物酔いしやすい人が起こしやすい傾向にあります。乗り物酔いしやすい層として、三半規管の感受性が鋭く平衡感覚をつかさどる前庭小脳が発達途上にある20歳未満が挙げられます。
また、一般的には男性よりも女性が酔いやすいとされています。またコンテンツの内容によって、VR酔いしやすいものがあります。
スピードの速い乗り物を体験するもの、無重力を想定したものなど、普段体験しないような環境をシミュレーションするものや、操作するキャラクターと実際の自分に体格差があるようなものが挙げられます。
いずれも脳が映像と実体験との間に矛盾を感じ、混乱をきたすこと原因と考えられています。また、PCのパワー不足による映像出力頻度(フレームレート、FPS:1秒間に見せる静止画の枚数)の低さもVR酔いに関係していると考えられます。
VR酔いが発生することで利用時間が制限されたり、場合によってはVR体験そのものに対する意欲を低下させたりするため、普及を妨げる主な要因のひとつに数えられています。
そのため、VR業界ではVR酔いのメカニズムの分析や、軽減化の方法に関する研究も進められています。
VR酔いを防ぎたい!設定で何とかなるってホント?
ヘッドセットの設定を調節することで、VR酔いを予防または軽減できる可能性もあります。ひとつめの方法はIPD(瞳孔間距離)を最適な位置に調節することです。両目の黒目同士の位置は個人差があります。
ヘッドセットを購入したらまず自分の黒目の距離にVRヘッドセットのレンズの距離を合わせることが大切です。
IPDが自分に合っていないと、疲れやすかったり、ピントがうまくあわなかったり、ふわふわと浮いているような感覚を受け、VR酔いにつながります。IPDは眼科で測定できますが、スマホアプリでも計測できます。
二つ目の方法としてVRゴーグルやプレイするコンテンツを高解像度、広い視野角、高いリフレッシュレートなど自然に近い見え方になるように設定することが挙げられます。
この設定はゲームなどのコンテンツとデバイス(VRゴーグル)の性能が異なる場合、低い方の性能にあわせて出力されます。
そのため、まだVRヘッドセットを購入していない場合には、VR酔いを回避するために90Hz以上のリフレッシュレートに対応したゴーグルを購入することをおすすめします。
そのほかの「酔いにくくなるコツ」とは
そのほかの酔いにくくなるコツをいくつかご紹介します。まずVR酔いを抑えるうえで有効なものは「頭を激しく動かさない」ことです。
自分の頭を急激に動かすと、ヘッドセットが処理に間に合わず視界情報と動作にタイムラグが生じ、VR酔いを引き起こします。VR体験をする際には視線を画面の中央に据えたままにすること、画面の動きが激しいコンテンツを避けることも有効です。
また、VR酔いが起こるメカニズムは乗り物酔いと似ているため、市販されている酔い止め薬も効果があります。
前提として、体調がすぐれない時には乗り物酔いもしやすい傾向にあるので、VR体験は健康に問題がない状態で利用することを心掛けることが大切です。
VR酔いしやすい場合は、1日あたりの利用時間を5~10分程度にするなど無理ない範囲にとどめ、少しずつ慣らしていく方法も有効です。
VRを体験する際には自身の体調にも気を配り、睡眠不足や疲労などがたまっている時には休息をとることをおすすめします。VR酔いを起こした場合にはすみやかにVRヘッドセットを外し、横になれる場所があるようであれば、横になって目を閉じましょう。
ゆっくり規則正しく深呼吸する、なるべく遠くを眺める、涼しい空気にあたる、など乗り物酔いを緩和するような対処によって、症状の緩和が期待できます。
オンライン上にはVR酔いをしやすいかどうかを判定できる動画もあります。事前にそれらの映像を活用することで、酔いやすい体質かどうかを把握できます。
まとめ
VR技術は今後さらなる分野に活用されることが期待されています。一方、VR体験中に気分が悪くなる「VR酔い」が、普及を妨げる要因となりうるとされています。
VR酔いは、ヘッドセットを通じて体験する視覚や聴覚とギャップがある場合に起こしやすい現象です。
たとえば、頭を急激に動かすことで映像にラグが発生したり、本来感じるはずの重力や振動が発生しなかったりすることで、脳が矛盾を感じることが発生の原因と考えられています。
VR酔いの予防にはゴーグルのIPDを自分にフィットしたものに設定することや、より自然に近い見え方に近くなるように出力設定を調整することが有効です。